2019年も残りわずかとなりましたが、今年もメジャーではいろいろな変化がありました。

MLB機構は否定していますが「飛ぶボール」の影響で本塁打が激増し、過去の記録を671本も更新する6778本塁打が飛び交いました。また、アストロズの組織ぐるみのサイン盗みが発覚するなど、米国野球の暗部にも話題が集まりました。

その一方で、試合時間短縮に取り組む機構側は、来季から野球ルールの一部改正を決定しました。特に話題を集めているのが、救援投手に関して「最低3人以上」(イニング終了での交代可)という登板規定を変更したことです。いわゆる、打者1人を封じるための「ワンポイント」を禁止とするルールで、野球の戦術にも影響するため、依然として抵抗感を見せる関係者も少なくありません。

時代の変化に伴い、改革していく姿勢は大切でしょう。ただ、今季限りで現役を退いたイチロー氏が、引退会見で残した言葉はとても貴重でした。

「2001年に僕がアメリカに来てから、この2019年の現在の野球は全く別の違う野球になりました。まあ、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような……。選手も現場にいる人たちはみんな感じていることだと思うんですけど、これがどうやって変化していくのか。次の5年、10年。しばらくはこの流れは止まらないと思うんですけど」。

イチロー氏が具体的にメジャーの野球のどの部分を指していたかは分かりません。もっとも、あまりにもデータを偏重するスタイルが浸透し、選手個々が「頭を使わなくてもできてしまう」ようになった側面は否定できないような気がします。

だからこそ、イチロー氏は日本の野球への思いも口にしました。

「日本がアメリカの野球に追従する必要なんてまったくなくて、やっぱり日本の野球は頭を使う面白い野球であってほしいなと思います」。

MLBは、今年初めて英国ロンドンで公式戦を開催したり、来季は映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台で試合を行うなど、ユニークで斬新な企画を進めています。

変化を恐れず、チャレンジする姿勢はメジャーならではですが、来季以降も、野球の本質だけは見失わないでほしいと願うばかりです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)